セミナー②「デジタル時代の映画マーケティング」【第5回】AIは脅威なのか? デジタル施策の温故知新
公開日: 2023/07/21
米ラスベガスにて開催された世界中の興行会社と配給会社が集まるコンベンション「CinemaCon(シネマコン)2023」(開催期間:4月24日~27日)にて、デジタル時代の映画マーケティングに関するセミナー「Movie Marketing: Welcome to the Digital Age」が開催されました。興行、配給のマーケティング担当者が登壇し、バラエティに富んだデジタル・マーケティングの成功事例からTikTokの活用事例、AIとの付き合い方まで、議論は多岐に渡りました。その模様を5回に分けてレポートします。
※本記事で触れられている内容は2023年4月時点の情報です
アンソニー・ダレッサンドロ(Anthony D'Alessandro)
デッドライン(Deadline):編集ディレクター&ボックスオフィス担当エディター
パネリスト
■興行会社
ダン・グリーン(Dan Green)
ヴュー・インターナショナル(Vue International):デジタル部門 グループディレクター
ステファニー・ミルズ(Stephanie Mills)
ホイツ(Hoyts):販売・マーケティング・コンテンツ部門 ディレクター
■配給会社
ダニエル・ベカス(Danielle Bekas)
ワーナー・ブラザース・ピクチャーズ(Warner Bros. Pictures):海外マーケティング部門 共同エグゼクティブ・バイスプレジデント
アレックス・サンガー(Alex Sanger)
ユニバーサル・ピクチャーズ(Universal Pictures):デジタル・マーケティング部門 エグゼクティブ・バイスプレジデント
最終回となる第5回は、映画の公式Webサイトが果たす役割の変化と、ChatGPTを始めとしたAIを用いた映画マーケティングについて議論が交わされました。特にAIついては議論が白熱し、利便性は認めざるをえないものの、権利に関する倫理的・道徳的側面での懸念について交わされた、興行、配給それぞれの意見に注目です。
再び脚光を浴びる映画公式サイトの活用法
最近の映画マーケティングでは、昔ながらのWebサイトやゲームが再び脚光を浴びるケースも目立ちます。この現象について、『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』のWebサイトや『コカイン・ベア』の8ビット・ゲームを展開したユニバーサルのサンガー氏が語りました。
「ずっと昔に私がデジタル広告事業を始めた頃は、Webサイトこそが顧客獲得に欠かせないマーケティング・ツールでした。ソーシャルメディアが登場してからは、Webサイトはパンフレットのような存在になったのですが、最近はリバイバルの流れがあるようで、再びWebサイトが脚光を浴びています」。
ユニバーサルがWebサイトを活用する大きな理由は「ファンサービス」だと語るサンガー氏。「『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』については、マリオとルイージが経営する“配管会社”の公式サイトを作り、イースターエッグ(隠れ機能やメッセージ)をふんだんに盛り込み、『ジュラシック・ワールド/新たなる支配者』では、恐竜の目撃情報を集めたサイト『Dinotracker』を作り、リアルタイムで自分がいるエリア周辺の恐竜をウォッチできる仕掛けを展開しました。ジョーダン・ピール監督作『NOPE/ノープ』では、映画内のテーマパーク“ジュピターズ・クレイム”のWebサイトを作りました。ピール映画のファンは、ストーリーの表層下で何が起きているのかを知りたがる傾向があるため、映画の世界観を掘り下げるようなサイトを展開したのです」。
「『コカイン・ベア』では、ユーザーがクマになってコカインを摂取し、パークレンジャーやキャンパーを襲うという、パックマン風の8ビットゲーム“Cocaine Bear: The Rise of Pablo Escobear”を展開。これが30~40ものメディアに取り上げられ、大きな話題となり、映画の認知度をアップさせました。何より、私たちにとって究極の恩恵は、顧客データが集まり、今後のキャンペーンでその顧客をリターゲットできることなのです」。
here is something to entertain you. play as me, and share your high scores: https://t.co/cACSYLGBbj pic.twitter.com/wxb9AwroCV
— Cocaine Bear (@cocainebear) February 14, 2023
興行側にとってのAIの影響と活用法
セミナーの最後には、AIが配給・興行の仕事に与える影響について議論されました。
興行側のヴューのグリーン氏は、「個人的には、とてもエキサイティングで、とても恐ろしくもある」とした上で、興行の立場から見たAIのメリットについて語りました。「興行においては、……(以下、会員限定記事にて掲載)
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