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「独占配信」戦略の効果
公開日: 2017/02/10

VOD(動画配信ビジネス)の未来~アメリカの現状~(2)

2016年のAFM(American Film Market)において開催されたカンファレンスでは、”Future of Video On Demand”というテーマのもと、映像コンテンツのプロデューサーや配給会社、配信プラットフォームのキープレイヤーたちが、どこで利益が出ているのか、どのように稼いでいるのか。それぞれの立場と現状をもとに議論したものまとめた第二回目。

 

モデレーター:

ブルース・アイゼンDigital Advisors 代表)

 

パネリスト:
スティーブ・ニッカーソンBroad Green Pictures /ホーム・エンタテインメント部門代表 )
エリック・オペカCinedigm /デジタル・ネットワーク部門EVP )
へニー・パテル AT&T Entertainment Group /ビデオ・マーケティング部門VP )
メイヤー・シュワルシュタイン( Brainstorm Media代表 )

ブルース(モデレーター):
エリックさん、御社のコンテンツの多くは独占配信、それとも非独占配信されているのですか?

 

エリック( Cinedigm /デジタル・ネットワーク部門EVP ):

当社は今、ドキュメンタリー作品に特化した「Docurama」、コミコン・ファン層に向けた「Com TV」、家族向け作品を集めた「Dove Channel」という3チャンネルを運営していますが、この3チャンネルのコンテンツは、主に非独占配信となっています。自社としては、過去に独占配信を何度か試したこともありますが、この3チャンネルはまだ発達段階にあり、独占配信ライセンス料を払うことは現実的ではありません。私たちのチャンネルはまだ、そのレベルまで到達していないのです。

ただ、我々のチャンネルのようなプラットフォームが急増しているため、そうしたサービスの非独占ライセンスからの収入は、権利元にとって重要なものになりつつあります。 数多くのプラットフォームで配信できるぐらいマスの関心の高い映画にとっては、こうしたセコンド・ウィンドウ・ライセンスは有効的でしょう。誰もが、NetflixやAmazon、AT&TやDirecTVなどのケーブル・ライセンスから、大きな収入を得たいものです。米国内だけでなく、海外も視野に入れられることも魅力です。

非独占コンテンツを自分のプラットフォームで見てもらうために、消費者にどのように訴求すればいいのか? 

 そもそも映画のSVODは、音楽のSVODと比べてコンテンツ数が少ない。自分が見たいものがそろっていると消費者が思う、専門配信サービスでライセンスするほうが効果的なのか?
 

ブルース( モデレーター ):
では、他のプラットフォームでも見られるコンテンツを見るために、Dove Channelをはじめとする御社のチャンネルに加入するメリットは? そして、それをどのように消費者に訴求しているのですか?

 

エリック: いくつか理由が挙げられます。まず前提として、どこかの配信プラットフォームに独占配信権をライセンスしたからといって、十分な普及力を期待できるわけではありません。数千万曲を擁する膨大な音楽カタログと違って、配信サービスの加入者が視聴できる映画やテレビ番組の数は、ごく小規模なもの。 例えば、Netflixのコンテンツ数は、ここ数年で大幅に減っています。確か、タイトル数は5100本ぐらいだったと思います。とても狭き門であり、たとえ、インディペンデント作品がNetflixのカタログ入りしたからといって、ずっと配信され続ける確率はとても低いのです。

一方、OTTサービスの長所は、たとえ非独占ベースだとしても、見たいものが見つかる場所であること。Dove Channelがいい例です。私たちのコンテンツの約83%は非独占配信ですが、84%はNetflixでもAmazonでも配信されていないものです。Com Channelについても同様で、その割合は90%に近いと思います。

こうした傾向は、多くの専門配信サービスに当てはまることだと思います。専門配信サービスのメリットは、他のプラットフォームでは見つけることができない、厳選されたコレクションを提供することができるということなのです。 

DirecTVによる映画の30日独占先行配信サービスについて

 インディペンデントのいい映画がちゃんと宣伝されていないことに問題意識をもって始めたサービスを、契約者は「付加価値」、また映画製作者は「よい宣伝となっている」と感じている
 

ブルース( モデレーター ):
へニーさん、DirecTVには、まず独占先行配信を行い、その後に、他のプラットフォームで配信するというプログラムがありますね。

 

へニー( AT&T Entertainment Group /ビデオ・マーケティング部門VP ):
はい。映画によって、非伝統的なリリース・パターンが適しているものと、伝統的なパターンが適しているものがあります。私が約4年前にDirecTVに入社したとき、まず、映画業界、特にインディペンデント映画業界の状況を把握することから始めました。とても質の高いインディペンデント映画が、数多く作られていたのですが、VOD市場のコンテンツ数が多すぎるために埋もれてしまい、十分な宣伝がされていなかったのです。

全米におけるDirecTVプラットフォームの会員規模は2000万世帯。一方で、インディペンデント映画は3~10都市のみで公開されているような状況です。私たちの会員は、それら3~10都市以外のエリアにも多くいるため、そうした観客がより多くの作品へアクセスすることができ、映画製作者ががより多くの観客に向けて作品を見せられるという、一石二鳥の機会を作ることができるのではないかと感じました。

そこで、私たちはスタジオと交渉を始め、新しいパターンで映画をリリースしたのです。 私たちのパターンとは、まず映画を獲得し、劇場公開の30日前にDirecTVで放送します。つまり、映画は最終的に伝統的な劇場公開に落ち着くわけですが、2000万世帯のDirecTV会員に宣伝できるエキストラ・ウィンドウができるのです。私たちの顧客は独占コンテンツを見ることができ、映画製作者は2000万世帯での大型リリースを実現することになります。私たちが同パターンでリリースする映画は、とても厳選された特別な作品であるため、30日の独占配信ウィンドウ内で、数百万ドル規模のマーケティング費をかけて宣伝します。 このパターンを始めた頃は、パートナーであるスタジオが配給・配信競合他社から反発を受けることがありました。

ところが、私たちが30日の独占配信ウィンドウ内で高額マーケティングを行うことによって、その後のVODを始めとする配信ウィンドウ全体のパフォーマンスが向上するということが、徐々に認知されるようになったのです。

 

DirecTVの独占配信の話

ブルース( モデレーター ):
DirecTVが独占配信を行う映画を選ぶ際の指標は、ライセンス料や収入予測などの金額なのでしょうか? それとも、新規会員獲得、または既存会員維持といったことも考慮されているのでしょうか?

 

へニー:
はい、私たちが最初に独占配信を始めたときには、収入ありきではありませんでした。赤字にすることはできませんでしたが、増収が目的だったわけではありません。

DirecTVという会社は、NFL Sundayチケット、Audience Network、U-verseなどに見られるように、長年、顧客に独占コンテンツを届けてきました。 映画の分野においても、それは変わりません。私たちの映画ビジネスをユニークなものにするために始まった試みなのです。私たちは深い分析エンジンによって顧客ベースを把握し、どのようなタイプの映画が求められているかを知っているため、顧客への価値を創造し、他のどこでも見られないコンテンツを届けることが目的でした。そのために、自分たちで取り扱う映画を厳選し、その作品について理解するよう努めています。各プロジェクトをよく見つめ、対象となる映画がこのリリース・パターンに合っているかを見定めるのです。

結果的に、これらの映画配信で利益を得られているわけですが、それは第一目的ではなく、幸運なことなのです。本来の目標は、顧客への価値創造。会員の満足度を上げ、他のプラットフォームでは得られない厳選された体験を得られる場所だと認識してもらうことです。

<(3)VODビジネスで勝つ方法 - 「衝動買い」を促す「発見」に続く>

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