記事

データと効果測定で知る顧客行動 - 広告を見た人のうちどれだけの人が映画館に足を運んだのか
公開日: 2017/10/13

【連載】狙い通り!モバイル時代のターゲットプロモーション(5)

この連載は、2017年春に、ロサンゼルスで開催された米バラエティ誌主催の映像業界関係者向けのカンファレンス”MASSIVE The Entertainment Marketing Summit”において、デジタルマーケティングのトップやプラットフォームパートナーたちが、モバイルメディアでのマーケティングコミュニケーションの事例を語ったセッションレポートです

 

スピーカーやセッションの概要は、連載1回目「モバイル時代にヤフーが唱える「コミュニテインメント」」をご覧ください。

※本記事で触れられているサービス内容はカンファレンス開催(2017年春)時点の情報です

◆ ◆ ◆ ◆
 

ゲイル・フギット(モデレーター)

現在のようにデータと効果測定から可能になったのは、『精密性と規模の両立』だと私は考えています。以前のマーケターは、そのいずれかしか手にできませんでした。これまではビッグデータはあっても、精緻なオペレーションは不可能でした。一方で精緻なデータがあっても、一度に少ない数の消費者に対応するのがやっとであり、大規模な施策の実行は難しかった。

現在の効果測定は市場に登場した多くの素晴らしいソリューションをカバーし、同時に、今日の消費者ニーズも反映できていると思われますか?今後よりダイナミックな施策が実施されるポイントとなることは何でしょうか?

幅広くオープンな協業によってデータ収集範囲を広げると大きく可能性が広がる

ラグ・コディゲ(アルフォンソ)

マーケターが最も長きにわたって最大の投資をしてきたのがテレビですが、同時にこのメディアは最も効果測定が進んでいないと言えますよね。問題はパネル調査への依存だと思っています。

しかし、デジタルではすでに事細かに効果が測定され、ユーザーがどこにいて、前後に何をするのかもわかっています。アルフォンソのような企業は今までとは異なったアプローチで、新たなテクノロジーを利用すればどのような効果測定も可能だとしています。力技にも推測にも頼る必要はなく、国勢調査クラスの規模で効果測定が可能です。そして、一度データを取得すれば、他のデータといくらでもクロスして活用できるのです。

ファンダンゴはチケットの売上データを持っていますし、フォースクエアナインス・デシマルのような企業はユーザーの位置情報を持っています。テレビデータを見ながら「この広告を見た人が実際に店頭に足を運んでいる」とか、「ディーラーを訪れている」といったことを確認できます。そして、訪店前後の行動もわかるのです。そういった情報は今まで入手できませんでした。

そして、我々が映画会社に対して行っているのは、たとえばどの予告編動画でも使われたことのない音声クリップを使用できれば、その音声をACR(自動コンテンツ認識技術) と映画館内でトラックして、広告を見た人のうちどれだけの人が実際に映画館に足を運んだのかを特定できます。”映画館内アトリビューション分析”ができるというわけです。
(参照:テレビ視聴行動の再発明?誰が番組を視聴し、TV広告に接触したのか

ここでのポイントは、データ収集範囲を広げ、幅広いパートナーとオープンに協業する姿勢を持てば、効果測定からより大きな可能性が生まれます。この流れはすでに自動車産業やほかの産業では始まっています。

「誰が」「いつ購入を決めたか」「どの活動が購入に結びついたのか」を明らかにしたい

エリアス・プリッシュナー(ソニー・ピクチャーズ)

我々自身を振り返ってみると、効果測定に関してはその人独特の意見や主張があると思っています。私もスタジオの担当者と共に判断することがしばしばありましたが、関係者全員がそれぞれ異なる測定方法を念頭に置いています。宣伝活動の効果測定方法が異なることで、業界的にも矛盾を抱えていました。

日常的に直面する根本的な課題のひとつは、我々は最終消費者や最終購入決定時点がわかっていないということです。最終的には、どのマーケティング活動がチケット購入に結びついたのかを明らかにしたいと思います。本当の貢献度合いを測定して初めて、PDCAサイクルが完結したと言えるのです。
ファンダンゴの「デジタルエコシステム」創造と既存顧客ベースの「映画ファン向けEC」私が考える最大の課題は指標の一貫性です。
現在は5つのスタジオに同じ質問を投げれば、5つの違う回答が返ってくるのです。

 

「消費者の行動に影響を与えるトリガーが実際に機能したか」も測定したい

マーク・ヤンゴ(ファンダンゴ)

我々はPDCAサイクルを完結するということと、消費者の購入意向を実際の購入行動――このケースでは映画のチケット購入ですが――につながる有効性を常に考えています。消費者が簡単に購入行動に移行できるよう計らい、この2点をつなげるべく鋭意努力しています。また、現在我々はSNSとメールに関しても検討しています。

私が最終的に考えている効果測定は、消費者の行動に影響を与えることを期待したトリガーが実際に機能したかどうかを捉えられるものです。我々のサービスにとってそれは、消費者が映画を観に行ってもいいと考えた際に、実際の行動に移すまでのプロセスをできるだけシンプルにすることを意味しています。

マルチタッチアトリビューション(MTA)モデルの構築で各タッチポイントの貢献度を割り出す

マーク・ヤンゴ(ファンダンゴ)

マルチタッチアトリビューションモデルの構築(※1)も重要な要素です。
これが可能な会社は非常に少ないのではないかと思います。ヤフーが自社のプラットフォームを通して10億人以上、SDK(※2)やコードも含めれば20億人以上のユーザーと接触していることを考慮すると、我々はその数少ない中の一社であると言えます。

これにより「あのコンバージョンの要因はこのプレースメントにあった、もしくはそのコンバージョンはあの2~3のプレースメントによるものだ」と特定することが可能になります。

顧客に差別化した提案ができることから可能になるものであり、その意味では我々は非常に満足しています。誰が必要としているかを念頭に置いた優れたソリューションであると自負しています。


(※1)マルチタッチアトリビューション:購入直前にクリックされた広告の評価だけでは各施策の正しい効果を計測できないため、商品購入までに顧客が接点を持った経路(タッチポイント)ごとに、各施策の売上に対する「貢献度」を分析し、その結果を広告の予算配分などに活かしていく。
(※2)SDKここではスマートデバイス上にインストールされているアプリから取得できるデータを指している

 

 

<(6)ハリウッドでのターゲティングとクリエイティブにおけるデジタルマーケティング活用 に続く >


狙い通り!モバイル時代のターゲットプロモーション

レポート・データ解説