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メジャースタジオからNetflixへの転身
公開日: 2020/01/24

Netflixが描く映画業界の未来
~Netflix映画部門トップ基調講演~ 第1回
メジャースタジオからNetflixへの転身
~新旧ビジネスの組み合わせが未来につながる~

 

2019年12月にロサンゼルスで開催されたカンファレンス“Variety's INNOVATE”より、Netflix映画部門トップ、スコット・ステューバー氏による基調講演“Keynote Conversation with Netflix Films' Scott Stuber”をレポート。

連載第1回は、スコット・ステューバー氏自身の背景に着目。Universal Studiosのワールドワイド製作部門副会長を務めた同氏が、Netflixを選んだ理由を追います。彼がNetflixで得られた新たな機会とは? これまで劇場公開作品を作り続けてきたステューバー氏が考える、Netflixが取るべき道筋とは? 業界の未来を見据えた選択理由に注目です。

 

※本記事で触れられている内容は2019年12月時点の情報です。

 

《目次》

 

 

ゼロからつくりあげることの魅力

 

 モデレーター:クラウディア・エラー(米Variety紙編集長)
スコットと私は長い付き合いになります。出会った頃、スコットはUniversal Picturesの重役、私は記者でした。以来、あなたはキャリアの大半を伝統的な映画製作会社で築いてこられましたね。スタジオのトップとして、また大物プロデューサーとして、多くの映画を製作されましたが、すべてが劇場公開向けの作品でした。しかし、Netflixは映画館での鑑賞体験の提供を目的としてはいません。なぜNetflixに移られたのでしょうか。

 

 スコット・ステューバー(Netflix映画部門責任者)
異なる要素の組み合わせに興味を持ったからです。私は10年ほどUniversal Picturesを率いてきました。そして、そこではプロデューサーとして仕事をしてきたのです。仕事人生の大半をスタジオで過ごし、みなさんから仕事のオファーをいただけたのは幸運でした。そのようななか、Netflixに魅力を感じたのは、ゼロから何かを始められることだったのです。設立から70~80年経ったスタジオでは通常、そのような機会には恵まれません。決められたやり方で経営することを求められるものです。

私がこれまでやってきたのはまさにそういった仕事です。ですから、Netflix は私にとって新たな挑戦でした。ゼロから何かをつくり学んでいくエキサイティングな機会が決め手だったのです。年齢を重ねていくと、何かに挑戦することは難しくなっていきます。しかし、多少怖いかもしれませんが、今までとは異なる手法を取ることが重要なのです。

映画産業が現在のような動きを見せているなか、未来につながるのは従来型と新規のビジネスモデルを組み合わせていくことだと信じています。そして、それを実行できるのは非常にエキサイティングで、やりがいのあることです。これまでとは全く違う仕事ですが、私はチームが好きで、人が好きです。私にとって、チームづくりはエキサイティングなことなのです。

私の歩んできたキャリアは幸運に大変恵まれていました。最初の上司はリチャード・ドナー(映画監督、映画プロデューサー)、ローレン・シュラー・ドナー(映画プロデューサー)の夫妻でしたが、人間として素晴らしい方々で、今でも親交があります。その後、長きにわたってロン・メイヤー(NBC Universal副会長)の下で働き、現在の上司はテッド・サランドス(Netflixコンテンツ最高責任者)です。いずれも品性が高く、自分たちの行動が公正ではないと進言すれば理解してくれます。また、個性的でもあり、魅力的な方たちです。これまでの仕事はすべてがエキサイティングでしたが、それをゼロからつくっていけるとなればなおさらです。

 

 

 

劇場公開作品との共存が成長のカギ

 

 スコット・ステューバー(Netflix映画部門責任者)
劇場公開向け作品との関係ですが、結局はどのように共存するかがカギになります。Netflixは共存することで成長を続け、共存・両立が可能であることを示していきたいと思っています。

今や消費者は多くの選択肢を持っており、デジタルツールを使いこなしています。スマートフォンでできるようになった事を考えてみればそれは明白ですね。私は50歳になりますが、10年、12年前には、人気のレストランに予約を入れたり、ナイキの靴やトム・フォードのネクタイを買ったりしたければ、4時間ほど必要でした。今では、帰宅途中にすべて完了します。シングルモルトのウイスキーを注文することもできます。デジタルやテクノロジー効率には、目を見張るものがあります。

映画製作においても、デジタルやテクノロジーの進化によってもたらされたツールの活用方法を考える必要があります。映画館と配信の良さを捉えて、両者にまたがる価値をつくることや、イノベーションを活用して映画製作を進化させ、新たな才能に発表の場を与えるなど、あらゆる事が可能なはずです。